人生の転機に出会った糸島で新しい暮らし方を模索中

東京から糸島へ移住してきた吉岡さん夫婦は、ともに九州の出身。東京で暮らしながら、「いつかは地元・九州に戻りたい」という気持ちを温め、2012年ついにその思いを実現した。

吉岡さん。神在のご自宅にて

九州の中でも糸島へ移住して来たのは、自然農を営む方との出会いがきっかけです。夫婦ともに九州出身なのでいずれは戻りたいという思いはありましたが、そこで何をするかは決めてなくて。その時、なんとなく興味があった“農”をキーワードにいろいろと調べるうちに自然農を営む方を知りました。

まずは話だけでも聞かせてもらえたらと思い、その方に連絡を取り糸島を訪れたのですが、その時は思いにもよらず、一日かけて糸島を案内してもらいました。また、お知り合いもたくさん紹介してくれたのですが、会う人会う人が「これからの暮らしをまじめに考えている」ことに感銘を受けました。自分も、まさに暮らし方を見直したいと考えていたところだったので、この人たちと一緒に新しい暮らし方を考えていきたいと思ったんです。

雄大な可也山の景色を見て、感動したことも覚えています。夕陽が大きくてすごく綺麗でした。東京で暮らしていて、こんな景色もしばらく見ていなかったなあと、しみじみ思いましたね。

自宅からも見える可也山。初めて訪れた時は、この景色に感動した

人生の岐路で出会った土地・糸島。始めて訪れたのが夏の終わり頃で、冬にはもう糸島に移住していたそう。

東京は、住むというよりも、目標を達成する場所。8年間住みましたが、あくまで夢や仕事のためでした。しかし、目まぐるしい生活に違和感を覚えながらも、長く暮らしていると、なんだか馴染んできたような気もして…そんな時に起こったのが、東日本大震災です。いずれはと考えていた九州に戻るタイミングを、確実に早めました。

検討から移住までなんと約3ヶ月というスピード移住!移住に際して、困ったことがなかったか尋ねると…。

期間が短かったので、物件探しは大変でした。妻が靴職人なので、自宅に工房を持てる一軒家というのが条件だったんですが、他にもいろんな条件を加えると選択肢が少なくて。今の住まいは、幸いにも知り合いの方伝いに紹介して頂きました。

吉岡さんが暮らす神在の住宅街

人との出会いが繋ぐ縁。移住してからの1年を振り返り、あらためて糸島の印象を聞いてみた。

移住のきっかけになった方の周辺の方々にも受け入れてもらえた事もあり、こちらでの生活には自然と馴染んでいけました。誰かしらの呼びかけやイベントで今でも集まります。月に3~4回くらいかな。知り合った人たちには、もともと糸島に住んでいた人と、僕たちみたいに外から移住してきた人がいますが、そういう意味では街のコミュニティと似ているところもあると思います。

移住して来てわずか1年というのに、吉岡さんには「いつもの仲間」と呼べる人たちがいる。よく集まっては、尽きない話をしたり、イベントを楽しんだり。そんな仲間を招待して、移住して来て間もなく、前原の商店街で結婚式も挙げたそう。そのきっかけも、いつも集まる仲間からの提案だった。

「結婚式をしようと思うけど、まだまだ知り合いも少ないし、親族のみで小ぢんまりとしようと思っている。」と、漏らした話がどんどん大きくなって。それで、せっかくするなら誰でも気軽に来てもらえるイベントにしたいなあと思ったのが、商店街での結婚式という形になりました。月一の軽トラ市(※)とも絡めたら、地元の人も喜んでくれるんじゃない?という声も出たりして、トントン拍子に話が進みましたね。結婚式当日は、人力車に乗って商店街をパレードしたんです。知らない人もたくさん祝福してくれて。

商店街での結婚式は、何十年も前にあったきりだったそうです。僕たちは、その当時を知るおじいさんおばあさんが喜んでくれたのが嬉しかったですね。

※糸島の魅力ある産品の数々を「市場」のように前原名店街に集めて、毎月第4日曜日に開催している商店街のイベント

新しい生活の中で始めた「自然農」について聞いてみた。

生業にするというよりは、自給のためと思って作っています。今は、市民農園を借りて、野菜作りと、複数の家族で田んぼをシュアしてお米作りをしています。就農するとなると少しハードルが高いけど、こんな風に自給の為に借りられるような畑がもっとあれば、と思いますね。‘農’業とは、これまでの人生で全く接点がなかったので、今でも続けることに正直不安はありますが、試行錯誤で勉強中です。田畑へ行き来する時の風景が何とも言えず好きです。特に何があるというわけじゃないんですが、糸島で大好きな景色の一つになりました。

畑から始め、新しい試みとして田んぼも始めた。初めての収穫が楽しみ

最後に今後の展望を聞かせてください!

試行錯誤の毎日ですが、東京では得られなかった、本当の意味で心の豊かさを感じられる新しい暮らし方を少しずつ形にしていきたいと思っています。その第一歩として、今学んでいる自然農を、まずはきちんと身に着けたいですね。新しい暮らし方が身につけば、糸島でも、どこでも暮らしていけるという確信があるんです。

現在、新しい暮らし方を模索している途中だという吉岡さん。お金と引き換えにしなくてもこんなに豊かな暮らしができるということを、都会で暮らしている人たちに示せたら、と話してくれた。

プロフィール(2014年3月現在)

●吉岡さん 33歳

●糸島移住歴 1年3ヶ月

●移住前に住んでいた場所 東京