Eさん（第5期 50代 自営業）
応募の経緯・動機
日本、北欧、南欧での3拠点生活を計画されているEさん。日本での拠点候補として、糸島に魅力を感じて今回の体験に参加されました。
――今回のトライアルステイに応募されたきっかけをお聞かせください。
現在は南欧に住んでいるのですが、数年前から、夫婦それぞれの両親が住む日本と北欧にも拠点を持ちたいと思い、準備を進めています。糸島については、インターネットで田舎暮らしや多拠点生活について調べる中で知りました。人気がある地域ということで気になってもいましたし、そもそも都会すぎる場所よりは田舎のほうが性に合っているんです。南欧でも、大都市である首都ではなくて、地方の小さな田舎町を選びました。実は昨年のトライアルステイにも応募したんですよ。諦めずに今年も応募して、やっと糸島に来ることができました（笑）。
――糸島で暮らしてみて、良いと感じられた点はどこですか？
海と山がいっぺんに楽しめる場所は、海外まで含めてもあまりないんですよ。このロケーションは本当に貴重だと思います。滞在中は加布里の湾に沿って散歩するのが日課になっていました。暮らす場所としては、これだけ静かな場所も珍しいと思います。騒がしい場所は好きではないので、その点も魅力的に感じました。近所を散歩していると、けっこう声を掛けてもらえるのは興味深かったですね。糸島は移住者の多い地域だからか、市外からの人に慣れている感じがして、居心地は良かったです。
――どこか、特別印象に残った場所はありますか？
自然の風景でベストを挙げるなら、芥屋の大門（※）展望所ですね。木立のトンネルを登っていくと、海がぽっかり見えてくるんですが、その道中も含めてとても良いビューポイントです。道路沿いにコスモスがたくさん咲いていたり、刈り取られた稲がガードレールに干してあったり、軒先に干物が並べられていたり、何気ない暮らしの中の風景がとても美しい場所だと感じました。他には、直売所や二丈温泉きららの湯、加布里の干物屋さんなど、糸島の文化が感じられるところを中心に訪ねました。あちらこちらにセンスのいいお店があり、そういった面でも楽しめましたね。
※芥屋の大門（けやのおおと）…志摩芥屋にある日本最大の玄武岩洞。海蝕（かいしょく）によってできた洞窟は、黒々と玄界灘に向かって口を開き神秘的な景観を呈している。国指定天然記念物。
――では、暮らしていく上で困ったと感じたことはありますか？
車がないと困る、というのは知っていましたが、この体験期間で実感できました。一度近くのスーパーまで歩いてみたんですが、思った以上に距離がありました。それから、習慣としてプールに通っているので、市民プールがないのには困りましたね。糸島くらい人口の多い市にはプールがあってもいいんじゃないでしょうか（笑）。滞在中は福岡市西区の市民プールを使っていましたが、やっぱり少し遠かったですね。レストランやお店は素敵なところも多かったですが、ところにより観光地化しているせいなのか、全体として少し価格が高めかなと感じました。
――滞在中、糸島のイメージが変わるような出来事はありましたか？
自然豊かな土地というイメージがあり、そういった美しい場所も実際とても多かったんですが、その一方で国道202号線沿いのパチンコ店やドラッグストア、それらの看板などが立ち並ぶ風景には少しがっかりしてしまいました。しかしこれは、日本全体の「街作り」の問題でもあると思います。人気があるというサンセットロード沿いも、80年代の江ノ島が思い出されるような雰囲気で、糸島の本当にいいところを引き出せていないな、もったいないなと感じましたね。ステレオタイプなトレンドを追いかけるよりも、漁港や温泉で出会った地域の人たちのように、地に足の着いた「ありのまま」の糸島を貫いていってほしいな、と思います。
――ずいぶんイメージが変わられたようですが、移住についてはどのように考えていらっしゃいますか？
移住については、とても前向きに考えています。シンプルなことですが、山と海があり、魚と野菜が美味しい、というのはとても強い魅力です。できるなら自給自足に近い生活がしたいですね。ただ移住と言うより、正確には多拠点生活になるので、普通の古民家などは部屋数が多くて大きなものが多く、私達の限られた予算では手が出ない、というのが正直なところです。小さな庵のようなものがあればいいのですが。
――最後に、トライアルステイ全体の感想をお聞かせください。
本気で移住や物件探しを考えるという意味では、3週間という期間は短いですね。理想を言えば２，３ヶ月はほしいと感じました。もっと言えば、本当は四季それぞれの姿を見て、感じてからでないと、地域の本当の魅力はつかめないのかな、とも。それでも全体としては、なかなか充実した滞在だったと思います。途中で少しイメージと違うな、ということもありましたが、どの国、どの地域でも同じようなことはあります。「暮らすように旅をする」「旅するように暮らす」が私たち夫婦のモットーですが、まさにそのような感じで糸島での日々の生活を楽しむことができたトライアルステイでした。
はっきりとした軸を持って移住を計画されているEさん。自然や暮らしの風景の美しさを実感した一方、少しイメージと違った部分についても、冷静に把握して次のステップへ進む材料とされたようです。
