Cさん(第3期 40代 夫婦+子ども3人 自営業)


――今回のトライアルステイに応募されたきっかけをお聞かせください。

(夫)私は福岡市中央区の都心部で生まれ育ち、現在までずっと暮らしています。今回応募したのは妻が田舎暮らしをしたいと常々言っているからです。糸島市は福岡市への通勤もできそうだし、自然がいっぱい。それに糸島市は母の出身地で、私も母から話を聞いていたので親しみがあります。都会は道が狭いし、車通りが多くて、子どもだけの外出も不安です。


(妻)私は出身が現在の嘉麻市のあたりで、若い頃は都会に憧れ、都心部での生活に満足していましたが、子どもが生まれて、だんだん田舎がいいなと思うようになりました。都会は流行の移り変わりが気ぜわしいし、お金もいっぱい使いますし。以前から糸島には何度か足を運んで、ファームパーク伊都国の貸農園で野菜を作ったり、雷山の別荘に泊まって糸島の山はいいなあと思ったり、深江の海はきれいだなあと思ったりと、いいところだと思っていました。移住を考えて、糸島以外の地域をインターネットで調べたこともありますが、実際に足を運び、地域コーディネーターさんのように地元の人の話を聞くと、実感が伴う糸島がいいなと思いました。


子ども達は自転車に乗って出かけたり、朝から野球をしたりして過ごした

 
――トライアルステイ中に買い物やレジャーで訪れた場所は?

(妻)直売所の「福ふくの里」でマダイを買ったり、「志摩の四季」で生きたイカを買ったり。イカは刺身とゲソの炒め物にしました。「伊都菜彩」でときどき野菜や魚を買い、近所の直売所の「雉琴の市」にも行きました。直売所によって価格に差があるんですね。住んでみて気づきました。スーパーは子どものお菓子類やパック詰めのものを買うくらい。普段から野菜作りをしているので、あまり利用しません。他にはあちこちのパン屋にも行きました。桜井、加布里、可也のパン屋さんなどなど。


(夫)「まむしの湯」にはよく行きました。


(妻)そう、1週間に数回通いましたね。もう常連みたいでした。お風呂はもちろんよいですが、そこでしか食べられないおいしい地元のお豆腐があるんです。「まむしの湯」の湧き水と国産大豆、天日塩を原料とした豆腐で、冷奴やおみそ汁にしました。道中の風景も好きだし、「まむしの湯」までは信号が少ないので、意外とスイスイ行けました。


糸島市の可也校区にあるパン工房ノーミ

 
――糸島で生活してみて、特に気に入ったのはどんなところですか?

(夫)私は平日仕事で福岡市内まで行っていましたが、朝6時に「雉琴の市」の裏のグラウンドで子どもと野球の朝練をしました。自宅から自転車を持ってきましたが、ここなら子どもが乗り回しても安全。1年生の次男が一人でコンビニまで自転車で行けました。福岡市内ではちょっと考えられないです。


(妻)ここは二丈深江の海が車で約10分と近いので、4,5回行きました。夕方に行ったこともあります。子どもも楽しかったようで、「海に行きたい」とねだることがありました。出掛けないでこの家でのんびり過ごすことも多かったです。窓を開けて、夕方の風を感じ、山の緑や夕陽を見るのが好きでした。風呂あがりの散歩も気持ちが良かった。今住んでいるところが、ビルとビルが密集し、夜も騒がしいところなので、静かで夜は虫の鳴き声が聞こえるこの家がとても居心地よかったです。子どもたちものんびりしていました。自転車に乗って出掛けたり、プラモデルを作ったり、本を読んだり。時間の流れがいつもと違うなあと感じました。


滞在した家は二丈深江の海が車で約10分と近く、夕方から出かけたこともあった

 
――糸島での生活で不便に思ったことは?

(夫)整備されたグラウンドのような場所はないですね。自然遊びができるから特に要らないのかもしれないですが。


(妻)何もなくていいんだ、と思いました。街灯がなくて夜が暗いですが、むしろ夜は暗いことが良いです。夜の暗さで危険はあるかもしれないですが、こういう地域は知っている人ばかりが暮らしているという安心感があります。小・中学校までの距離がありますが、今の住まいも校区の隅っこで学校から遠いです。また街なかに住んでいると、子どもの運動不足が心配です。だからいっそ体力をつけるいいチャンスですよ。子どもたちには不便さを経験し、何かあった時に対処をしながら、不便をプラスにする力、社会で揉まれても一生を生き抜く力を身につけてほしいです。


――地域の活動や行事にはどのように考えていますか?

(妻)地域の役割や行事は難しい面もありますが、住む地域や土地を好きになれば、苦じゃなくなると思います。畑を作ったり、自然や里を好きな気持ちを持ったりして、地域の人と仲良くなって、地域を愛していきたいですね。自然や地域を守っていく側になることが大切なのだと思います。


(夫)今の地域でも自治会や地域の行事があります。PTAの役員もやったので、こちらでも必要であれば、引き受けることに特に抵抗はないです。大事なことだとも思います。


長糸校区の夏祭り。校区を上げての祭りに多くの人が集まる

 
――糸島で暮らしていく上で課題は何ですか?

(夫)市街化調整区域のエリアでも家が建てやすくなるといいですね。


(妻)でも規制の緩和はほどほどに。規制のおかげで自然や田園の景観が守られているから、あまり開発をしてほしくない気持ちもあります。便利で新しくて安全ということ以外にも価値があると思います。あとは私が自分でできるうちに、元気なうちに引っ越したいですね。


――糸島でもっと知りたいことは?

(夫)不動産の情報を知りたいですね。


(妻)移住者で農業をしている人を知りたいです。糸島には最近移住者が多いようですし、どんなふうに農業に取り組んでいるのか、どんなコミュニティを持っているのか、地域とどうやってなじんでいったのか、話を聞きたいです。私は畑で自給自足の生活をやってみたいんです。今も貸農園で野菜を作っていますが、移住者で農業をやっている人のコミュニティを知りたいです。いろんな情報交換できる場があるといいですね。


――これから糸島でどのようにしたいですか?

(夫)住まいは長糸や雷山、怡土、一貴山などの県道49号線の沿線あたりだといいですね。


(妻)ヤギ、ニワトリ、ミツバチを飼いたいです。畑も耕したい。家は小さくても古くてもいいので、広い土地で畑を作りたいです。ヤギは庭の雑草を食べさせたい。私はそれで十分ですね。今が便利を極めた街なかに住んでいるので、その反動かもしれないですが、あまり密集していなくて広々としたところで暮らしたいです。


(夫)妻はキャンプで行く山の中でも「ここいいね、住もうか」と言うんですが、さすがにそういうところは無理だろうと(笑)。その点で糸島は、そこそこ田舎だけど、天神も空港も行きやすい。田舎も便利さも両方そろっている暮らしができそうなところを気に入っています。


糸島市で過ごした時間はいつもと流れが違うなあと感じた