Fさん(第6期 40代 夫婦 会社員)


そばの刈り取りや乾燥を手伝わせてもらった
――今回のトライアルステイに応募されたきっかけをお聞かせください。

以前勤めていた会社の同僚に、九州でそば屋を開業したいので、物件を探していると相談したところ、空き家になっているという、同僚の親御さんの家を紹介してもらいました。そこで平成29年のゴールデンウィークに加布里を訪問。そのときに二丈深江のゲストハウス「小春」に宿泊し、いろいろ糸島の話を聞きました。宿泊した翌日の早朝、二丈の霧がかかった段々畑が清々しく心地よかったのが印象的でした。二丈には糸島の山の原風景があると聞き、そばを扱うなら水のきれいな所が良いと考えていたので、二丈に魅力を感じました。その後帰ってから糸島市のWEBサイトを見て、トライアルステイのことを知り即申し込みました。


――トライアルステイ中は糸島でどんな暮らしをしましたか?

私は現在そば屋の開業準備中で時間の融通がききやすいけれど、妻は仕事があるため週末3,4日泊まりに来ただけでした。それ以外は一人でそばを打ったり、出かけたり。車を持っていないので、平日はレンタカーを借りました。レンタカーは土日を含めると料金が高くなるので、なるべく車を使うのは平日にしました。地域コーディネーターさんを紹介してもらって、自転車を借りてからは土日に自転車で長糸近辺を回ったり、二丈深江のゲストハウスまで足を伸ばしたりしました。


伊都菜彩で買った野菜類やアジの一夜干し

最寄りのお店として長糸のコンビニもよく利用しました。この地域で農業をしている人たちが軽トラですっと集まって、コーヒーなどで軽く一服して、またすぐにそれぞれの農場に戻っていく様子を見て、コンビニが人と人の交流の場になっていることに、都会との違いを感じましたね。区長さんはご挨拶に行くと、丁寧に糸島や長糸のことを教えてくれました。そば打ちの他に、そば栽培にも興味があると話すと、農業のことも教えてくれました。滞在期間中は雨が多く、行動が制限されたのが残念です。


――糸島で生活してみて、買い物や食事で訪れた場所は?

到着してすぐに二丈の「福ふくの里」に行ったけれど、お昼すぎにはほぼ完売していました。九州の醤油でそばの返しを作りたかったのでミツル醤油を買いました。「伊都菜彩」でミカン、イチヂク、トマトなど地元の野菜や果物を買いました。「伊都安蔵里」は糸島のブランド豚肉を扱っていて、寒い日の夜には白菜と豚肉の鍋を作りました。外食はゲストハウス「小春」のおすすめで、二丈のレストランに行きました。メニューが定期的に変わり、肉を使わないヘルシーな料理がおいしかったです。女性には人気でしょう。別の日には、しっかりおいしい肉を食べたくて、板持の焼肉屋さんに行きました。ご夫婦で切り盛りするお店で、値ごろでうまくて親切。清潔感もあり、今後自分がお店を開くときに参考にしたいと感じることがいろいろありましたね。


――糸島で行ってみて気に入った場所や楽しかった出事は?

 糸島の展望台はおすすめです。土地勘がなく、糸島がどんなところなのか分からない人は一度行ってみるといいですよ。森林、農地、街の広がり方、海と面している様子が一望できます。私は白糸の滝の近くの波呂展望台と一貴山展望台に行きました。それぞれの住みたい地域の展望台に行くとよいと思います。  区長さんには国土地理院刊行の地形図を貸していただき、とても役に立ちました。観光の地図はデフォルメされて観光地がわかりやすい反面、距離感や地形がつかみづらい一面もあります。地形図を見ると糸島市の規模や地域の土地の利用がよく分かります。展望台から見た風景と同じで、それからは地図を見てだいたいどんな場所なのかが想像しやすくなりました。


芥屋の海

また私は釣りが趣味なので芥屋の幣の浜と漁港で釣りをしました。海がとてもきれいで、また漁港も清掃され居心地が良かったです。いろんな地域の海に行きましたが、芥屋の海は特にきれいだと思いました。移住者の交流の場としてゲストハウスに宿泊するのは一つの方法だと思いました。市役所や地域コーディネーターの方とはまた異なる視点で糸島の情報交換ができていい刺激になりました。


芥屋の海岸にてルアーで釣ったヒラスズキの子

 
――糸島で暮らしていく上で課題になるのはどんなことだと思いますか?

車がないと生活は大変ですね。夫婦で暮らすなら二人とも免許が必要。区長さんも言っていましたが車は一人一台の世界ですね。また歩道の整備が都会に比べると行き届いていないところがあります。街灯が少ないので夜道は暗いですし、草丈の高い雑草が生えていると歩きにくい。車からも人が見えにくいので気になります。でも暮らしの上で不便と感じるのはその程度で、それほど大きなことではないです。ただ子どもがいるとまた少し視点が違うのかも知れません。市街化調整区域については、私のようにお店を出したい人にとっては気がかりなことです。市街化調整区域というものがあることも初めて知りました。あくまでも個人の意見ですが、地域の人のためになるようなお店や施設は、一部制限を緩めるといった措置があるといいですね。


――地域の人との交流や行事にはどのように考えていますか?

今回のトライアルステイで糸島のいろんな人と出会い、交流できたことで、福岡への移住や新しくそば屋を開くことに一つの広がりが持てました。区長さんや地域コーディネーターさんに土地のことを教えてもらったり、そばを栽培している人を紹介してもらったりしたのは、とても大きな一歩です。そばを打つ者としてそばの生育や加工には関心があったからです。そばを栽培している人とは今後も、栽培を手伝わせてもらったり新そばを一緒に打ったりすることになりました。糸島に通う理由ができたのは嬉しいです。地域の人との交流は大切だと思います。妻も糸島は「人の交流が濃い」と言っていました。関東はドライですからね。地域の公民館の行事も参加すると、地域の人と知り合いになれます。私は「男の料理教室」に飛び入りで参加させてもらいました。そういった地域の人と話したり、学んだりするふれあいを通じて人間関係を築くことが、地域に住むには大切だと思います。


男の料理教室の仕上がり。宮田さんは飛び入りで参加

 
糸島で暮らすならどんなことしたいですか?

まだ糸島市に移住するかどうかは、はっきりしていません。仕事があれば糸島市に住みたいですが、食べていくための仕事をする必要があるので、いったん福岡市に移住するつもりです。仕事をしながら、そば屋の場所を探し、開業の計画を立てるつもりです。お店を糸島で開業するかどうかは、物件の都合もあるので分かりませんが、糸島で人とのつながりもできたし、糸島の人たちの役に立つ何らかのビジネスはしたいですね。