Gさん(第7期 30代 夫婦 会社員)
――びっくりしましたが、糸島トライアルステイでこちらに入居される直前、神奈川県横浜市内のご自宅を引き払って来られたそうですね。いきさつを教えていただけますか?
(夫)はい、もうこちらに移住すると決めて、家財道具を車に詰め込んで来ました。実は、ずっと田舎暮らしをしたいと思っていたんです。私は東京都出身で、都心暮らししか経験がないのですが、長年忙しく働いてきた疲れもあるのか、ガラリと環境を変えて、違う生き方をしたくなったんです。
ちょうど1年前、有給休暇を取って1週間ほど、北部九州を見て回りました。九州方面を考えたのは、東日本大震災による原発事故の影響が少し気になっていたこともあります。最終的に、糸島市を選んだのは、きれいな海や山があって時間の流れもゆったりと感じられたことと、福岡市や本州とのアクセスがいいこと。仕事のことを考えると、都心とのアクセスは、やはり大切ですしね。そこで、糸島トライアルステイがあることを知り、移住を決めて応募したという流れです。
(妻)本当はもっと早く移住したかったのですが、2人の仕事の関係もあって、タイミングが今になったという感じです。夫は9月に退社し、私は販売の仕事を10月下旬に辞めました。それからすぐに荷物をまとめて、陸路糸島にやって来ました。
――都会での生活に疲れて田舎暮らしを考え始めたということですが、以前はどんな暮らしだったのですか?
(夫)「まさに東京!」という仕事をしていました。2人とも、以前は代官山のライブハウスで働いていたんです。4、5年前にライブハウスから別会社に転職したんですが、そのときの生活が濃厚で、いまだに疲労感のようなものを引きずっている感じです。当時の生活は、昼も夜もない感じでした。週末は夜から早朝までライブハウスで仕事しますが、昼間も営業で回らないといけない。休日は、月に1、2日くらいしかなかったですしね。
(妻)私は、ライブハウスの受付だったので、外で並んでいる人たちのチケットを切る担当でした。夏はすごく暑くて、冬はめちゃくちゃ寒い。
(夫)でも、私は、ステージ関係の担当だったから、年中Tシャツ!同じ職場なのに、全然違ったよね。しかも、今考えて本当に良くないのは、ずっと地下で過ごしていたことです。たまに時間があると、みんな、太陽の光を浴びてボーッとしていました。食事もまともな感じではなくて、昼の空き時間に、立ったまま弁当を食べるという具合でしたよ。
(妻)やっぱり、そんな生活だと体がおかしくなるし、精神的にもじわじわやられるような雰囲気はありました。ほかの会社の人から、「みんな同じような、どよーんとした顔しているよ」って言われたこともありましたね。夜は、寝た方がいい(笑)。
(夫)それで、私はオーディオ関係の会社に転職し、妻も、手仕事の器を扱う店で販売の仕事を手伝うようになりました。本当は、この転職のタイミングで田舎暮らしをしかたったのですが、そのときは、いろいろな関係で、すぐには動けなかったですね。
―トライアルステイで3週間ほど、糸島暮らしを体験していただきました。実際に暮らしてみて、いかがでしたか?
(妻)仕事も辞めて来て、もうここに住むつもりだったので、トライアルステイの期間は、物件を探して回りました。すぐに糸島市内にアパートを見つけられたので、途中からはそちらを拠点に動いています。私は、やりたいことがあって、器を扱うお店を始めたいんです。自宅兼店舗にできる物件を二丈地区中心に探してみたのですが、いくつか回った不動産屋さんは口を揃えて、「同じような物件を探している移住希望者が多い」と話していました。なかなか、イメージに合うものは見つかっていませんが、アパートに住みながら、ゆっくり探して行こうと思っています。
(夫)横浜と違うことは、「日が暮れると何もないなー」ということ。人も歩いていないし、街灯も少ないし、なんだか、1日が終わりなんだなーという雰囲気になってきますね。これが、「人間らしい」生活なんでしょうね(笑)。でも、実は、横浜よりも便利なこともあって、それは、衣食住がコンパクトなエリアで事足りること。アパートから歩いていける距離にスーパーがあるし、車ですぐのところにホームセンターや飲食店がある。
(妻)意外に思われるかもしれませんが、横浜で住んでいたところは、歩いて行けるスーパーはありませんでした。だから、仕事の帰りに買い物をしていました。
――衣食住で、印象的だったことはありますか?
(夫)まず、定食屋さんが、安くておいしいし、量が多い!食材も、おいしいですね。東京にも、いい肉はありますが、値段が倍する感じ。安くておいしい肉や魚が買えるのは、ありがたいです。それから、車で20分も行けば、きれいな海に沈む夕日を見られるという環境が、非現実感というか、不思議な感覚。首都圏だと、きれいな海に行くだけで何時間もかかったり、行っても人で混んでいたり、ということが普通ですから。立石山も、すごくいい場所でした。お手軽に、あんな絶景を見られるなんて、今までにないことなので、本当に贅沢に感じます。
(妻)雑貨店や飲食店、観光地など、毎日いろいろドライブして回りました。雷山千如寺大悲王院の紅葉も、ちょっと早い時期でしたが、きれいでした。一方で、気をつけないといけないなーということもありました。住んでみて、思った以上に、運動不足になることが分かりました。あちこち動くのが車になるので、本当に歩いていない。都心暮らしだと、交通機関を使って通勤していても、かなり歩きますからね。これはまずいと思って、2人でウォーキングした日もありましたよ。
――これからのことですが、新しい生活で、どんなことにチャレンジしたいと考えられていますか?
(夫)仕事のことは考えていて、オーディオ機器を扱う仕事をしたいと思っています。買い取りや整備、販売ということをやるイメージなので、人口が多い福岡市と隣接していて、車で本州にも出やすい糸島市は、好立地です。長く東京や横浜で働いていると、都会の大きな流れに乗っかっているような生活だと感じるようになりました。それは、自分の生活を、ほかの何かに委ねているような、不安定な感じでもあるんです。これからは、主体を自分に取り戻したい。自分の力で仕事をして、しっかり根を張って生きるような実感を持てる暮らしをしていきたいです。
(妻)私は、自分の店を持ちたいという夢がありますが、そちらは、焦らなくても大丈夫かな、と思っています。糸島は天神にも出やすいので、いい物件と縁があるまで、天神で働くのもいいかもしれない、と思っています。そんな風に、ひょっこり引っ越して来ても、暮らすことに困らなさそうなところも、糸島の魅力ですよね。あとは、せっかくこうした環境に移り住んだのだから、できれば、自分たちが食べる野菜を育てたい。庭付きの物件が見つかれば、やってみたいですね。