Iさん(第9期 50代 夫婦+子ども〈今回はご主人が単身参加〉 会社員)


――今回、糸島トライアルステイに応募されたのは、なぜですか?

私は、今は岡山市に単身で住んでいますが、妻と子どもは北九州市に住んでおり、私自身も生まれ育ったのは九州です。だから、九州には友人もいるし、ずっと愛着がありました。前職は、西日本エリア内の転勤だったので、九州に戻りたくて、7年前に今の会社に転職しました。思いの外、岡山生活が長引いていますが、あと2年後には福岡へ異動することが決まっています。念願の福岡暮らしを始めるときは、終(つい)の住みかにできる場所にしたい。今は、その「終(つい)のすみか」を、適度に山、海、まちがあって景観も良い糸島市にしようと考えています。そのための準備として、定年を迎えるまで博多に通勤しながら暮らせるか、定年後に生活を続けていけるか、という点を吟味したく、体験入居させていただきました。


滞在していた家から見た、山側の風景

 
――なるほど。退職後も見据えた暮らしやすさについて、関心をお持ちだったのですね。実際に滞在されて、いかがでしたか?

残念ながら、今回は、諸事情で滞在期間が9日間と短かったので、十分ではありませんでしたが、その中でも、移住を考えるための材料を得ることができました。通勤は、バスや電車、車で試しましたが、悪くはなかったです。自宅から博多の会社まで、1時間半から2時間でした。ただ、退職後の生活を考えると、公共交通機関が少ない点が、気になりました。私の場合、糸島市に魅力を感じたポイントは、適度な自然環境があることです。今回滞在してみて、そんな、いわゆる〝田舎〟に住むなら、車が必須なんだろうな、と感じました。年老いたとき、マイカー以外に生活の足がない住環境だと、いろいろと困るかもしれませんね。駅の近くに住めばいいのでしょうが、私の場合、住宅密集地に住むのであれば、糸島市にこだわる理由はないんです。それなら、病院や交通機関、買い物などが便利な福岡市内でいいじゃないか、ということになります。先々の不安要素ばかり考えても仕方ないのですが、終のすみかを決めるとき、何を優先させるのか、あらためて考えることができました。


ドライブで訪れた、芥屋の海岸

 
――適度な自然環境があるところに住み始めることができたら、どのような暮らしをしてみたいですか?

やってみたいと思っていることが、いくつかあるんです。もし、水がきれいな場所が見つかれば、わさびを作りたいな、と。あと、今の仕事が健康福祉や介護に関連していることもあって、広い土地が見つかれば、保育園を併設したデイサービスをやりたいな、という思いもあります。まだ、何かを具体的に決めたという段階ではありませんが、そうした未来図を思い描いては、夢を膨らませているところです。糸島市は、子育てにはいい自然環境だということを、よく耳にしますが、「子どもたちが出て行ったときに、楽しいところなのかな」ということが、私の関心事ですね。


近くの店でランチに食べたカレー

 
――滞在中は、どんな場所を訪れ、どんな体験をされたのか、お聞かせください。

あまり時間がなかったので、主に、牡蠣小屋や神社仏閣など、観光地を巡りました。よく訪れて好きだったのは、福吉漁港です。ほかは、物件巡りをしたり、博多まで通勤してみたりして、過ごしました。地元の人から話を聞く機会は、ほとんどなく、地域の区長さんにごあいさつできた程度でした。観光客でにぎわう夏の糸島ではなく、冬の時期を体験できたのは、移住の参考になってよかったです。


――物件探しでは、手応えはありましたか?

いえ、なかなか難しそうだな、というのが、率直な感想です。車で、あちこちを見て回ったのですが、耕作放棄地や空き家はいっぱいあっても、売地・売り家がとても少ないという感触でした。これからも、ときどき糸島市に来て、物件を探してみようかな、と思っています。もし、気持ちよく住めそうな場所が見つかったら、そこで暮らしている地域コーディネーターの方を訪ねて、日常生活についての話をいろいろとお伺いしてみたいです。移住するのか、別荘という位置付けにするのか、その辺りも含めて検討することはたくさんありますが、年内くらいには、方向性を決めたいですね。


静かなたたずまいだった桜井神社