Jさん(第10期 50代 夫婦 会社員)


――糸島市の「いとしまちょっと暮らし(トライアルステイ)」に応募した動機は何ですか?

(妻)2、3年くらい前に実家の北九州へ帰省し、定年後は田舎暮らしをしたいと兄に話をしたら、糸島市を薦めてくれました。それで糸島市に何度か足を運んで、次第に糸島市への関心が高まってきたんです。その後、福岡市内で働く夫の友人からこの体験移住(いとしまちょっと暮らし)の話を聞いて、ホームページを探ってみました。2月なら夫の仕事も休みが取れそうだったので応募しました。


(夫)10年ほど前からリタイア後の田舎暮らしのイメージを描いていました。景色のいいところで畑仕事をしながら住みたいなあと。糸島市に初めて来たのは2015年の9月頃だったと思います。二丈吉井の「アッカプントエッフェ」に宿泊しました。眺めた星空や畑の景色はとても美しかったです。また、横浜から移住し、二丈吉井でリノベーションした古民家にお住いのご夫婦を紹介していただきました。その古民家が非常に良かったのです。そのご夫婦とはそれからも交流が続き、糸島市に移住したい気持ちが私も強くなりました。


滞在した物件(本)の庭に咲いた梅の花

――トライアルステイ中は糸島市でどんな暮らしをしましたか?

(夫・妻)勤めのほうは完全に休みを取ってきましたので、自由な毎日でした。「伊都菜彩(※1)」にはよく行きました。恵方巻きを買ったり、静岡の親戚に送るみかんを買ったりしました。非常に有名な「伊都菜彩」ですが、何度行っても魅力が尽きないです。「福ふくの里(※1)」も利用させていただきました。「志摩の四季(※1)」にも行きましたが、ここのところ荒天続きで、鮮魚の入荷は少なかったようです。近所の「雉琴の市(※1)」も天候不良で閉まっていたくらいです。湧き水「しょうずの水」を汲んできて料理などに使わせていただきました。日常の買い物は加布里のスーパーを利用しました。加布里はお店が揃っていて便利なところでした。


(妻)地域振興課のご担当の方に事前にお願いしていたこともあり、多くの地域コーディネーター(※2)さんを紹介していただきました。滞在した長糸を始め、加布里、雷山、一貴山、深江、引津、可也の校区公民館に行ってお話を伺い、『生きた情報』がとても参考になりました。


(夫)先輩移住者の方々に会って、移住の魅力やそれぞれの地区の良さを聞くことができました。これまでは専らインターネットで物件を探していましたが、現時点では売却する意思は確認できないけれどもしばらく空き家にしている住宅などもそこそこあり、市場には出ていないけれど、潜在的には理想の物件がありそうだと感じました。タイミングが合えば、希望する家と畑での暮らしができるのでは、と期待が持てました。


※1:農林水産物直売施設

※2:転入希望者に対して、通勤や通学、買い物、地域コミュニティのことなど、地域の生活密着情報の提供を行う人を「地域コーディネーター」として、糸島市が小学校区10校区に配置している。


志摩船越の海

 
――生活してみて、特に気に入ったのはどんなところですか?

(夫)会う人はみなさん親切にしてくれました。


(妻)ボランティアさんが運転している自主運行バスはいいですね。今は福吉、引津、一貴山の3校区で運行しているそうですが、他の校区にも広がればいいし、今後も存続してほしいです。


(夫)糸島市の病院は送迎サービスをしている病院が多いと聞き驚きました。今住んでいるところではあまり聞かないサービスです。高齢の方にとってはとても良い施策だと思います。また、糸島市は公民館のサークル活動が活発で催し物も多く魅力的です。「男の料理教室」や「陶芸教室」なども参加してみたいです。福吉公民館では、滞在中に福吉JAZZも開催され、楽しむことができました。


市立福吉公民館での「福吉JAZZ」

 
――どの地域に興味がありますか?

(妻)一貴山地域は水路を流れる水がとてもきれいなのが印象的でした。感じのよい古民家もありました。福吉は山から海を眺める景色が以前から気に入っています。でも住むとなると、私は駅から遠くても徒歩30〜40分のところまでが理想ですね。古民家に惹かれる一方で、暖かく新しい家がいいとも思うし、矛盾を抱えていますね。


(夫)良いなと思うところは一貴山や福吉以外でもたくさんありました。上深江の川沿いの桜並木も花が咲く時期は美しいでしょうね。足を運んでいない地域にもまだまだ可能性がありそうで楽しみです。仕事の関係で実際に移住するまでもう少し時間があるので(来年春以降の予定)、まだ地域は絞らなくてもいいと思っています。


一貴山の田畑

――地域の活動や行事はどのように考えていますか?

(妻)糸島市は東西に長く、また海沿い、山沿いの地域もあり、各地域で気候や区費、行事などが異なるようなので、家だけ見て決めるのではなく、そういったことも考えて購入しなければ、と思いました。地域の情報は不動産屋さん任せにせず、区長さんや近所の人に直接お話しを聞くといいですね。近隣の人とは仲良く暮らしたいし、トラブルを避けるためにも、事前に地域のことを知っておくことは、大切だと思います。


福吉公民館の雛人形

――糸島市で暮らすならどんなことしたいですか?

(夫)「アッカプントエッフェ」(前述の二丈吉井のアグリツーリズモ)のオーナーさんから、福吉駅近くにおすまいの移住者のご夫婦を紹介していただき、お会いする機会がありました。お宅を訪問してお話を伺うと、ご主人がなんと私が卒業した高等学校の先輩でいらっしゃって驚きました。さらに、奥様が福吉のコーディネーターを務められている方と聞き二度びっくり。移住後の生活を伺うと、果樹畑や野菜畑で作物を作り、自家製ジャムを直売所で売られたり、ボランティアで自主運行バスの運転手をなさったりと、地域にとけ込んで地域の方々と仲良く暮らしていらっしゃるご様子。私の思い描く糸島生活に重なるところが多くとても参考になりましたし、心強く感じました。私もじき定年を迎えますが、かなり多忙なサラリーマン生活が長かったので、リタイア後は糸島市で晴耕雨読の田舎暮らしをする理想を描いています。JRの沿線のような生活の利便性を重視するよりも、不便を逆に楽しむようにすればよいと。田園の広がる地域で、できるならば農家住宅のような古民家をリノベーションして住み、畑が付いていなければ別に借りて、農業とまでは行かないにしても、畑を作りたいです。また、木工や陶芸もやってみたいです。今はまだ半ば夢を語っているような感じですが、いずれ実現できるのではないかと希望を持っています。やはりそのためにも地域にとけ込んで仲良くさせていただきたいですね。