来て、見て、感じて、相性を図る
移住計画は、毎週末の糸島訪問から

南風台の閑静な住宅街で暮らす池田さん一家。移住の際、子どもの教育環境を第一に考えて、住む所よりも先に、校区探しから始めたという珍しいケースだ。

糸島に越して来る前は、春日市に10年間住んでいたそう。2008年、お子さんが小学校に入るタイミングに合わせて南風台に移住した。

休みの日は家族で借りている畑へ

春日市では家も建てていたのですが、子どものためにより良い教育環境を、と考えて移住を決めました。夫婦ともに学生の頃から海が好きだったので、“西のほう”とだけエリアを決めて、まずは校区探しから。前原・波多江・引津・可也・・・週末のたびに実際に海沿いの小学校を訪れては、家族会議を繰り返しました。

実際に足を運んでみて、なんとなく感じが良いなと思ったのが、今通っている南風小学校。感じ方は人それぞれだと思いますが、いろいろと見て回る中で私たち家族に一番しっくりきたんです。住宅は、南風小学校の校区から探しました。

“南風小学校の校区内”という制限つきの住居探し。困難はなかったか尋ねてみると…。

選択肢が少なかったことでしょうか。西エリアに住むのは初めてだったので、まずは賃貸で検討したのですが、住宅情報誌やネットを駆使しても、ヒットするのはたったの2~3件。場所を“南風校区”と決めたのが2008年の年明けで、小学校進学に合わせて同年の4月には越したかったので、ひとまずそのなかで一番納得できる物件に決めました。それが今の家。

もっと自然に近い所や、もっと家賃の手頃な所など、校区を制限しなければいろいろと選択肢はあったのでしょうが、“子どもの教育環境”という優先事項を考えると、他に選択肢がなかったですね。入学式の直前にバタバタと引越ししたのを覚えています。

まさに閑静な住宅街という雰囲気の南風台地区

越してきて6年。糸島での暮らしをすごく気に入っていると話す池田さん夫妻。
実際に暮らしてみての魅力を聞いてみた。

なんといっても、自然が豊かなこと。空気が全く違いますし、時間がゆっくり流れているようにも感じますね。緑がありながら、海が近いことも魅力です。

春日市に住んでいた頃は、片道2時間かけて、海水浴や魚釣りに行っていました。帰って来る頃には逆に疲れていたり…。今は海がすぐそこにあるので、事前に計画しなくても、その日の気分で出かけることができます。

それから、食べ物がおいしいことも大きな魅力です。糸島では、地元産の採れたて野菜が産直やスーパーで手軽に手に入ります。よく買い物するのは、伊都菜彩や、志摩の四季、Aコープ。生産者の方の名前も書いてあるので、地元とのつながりを感じられるのも嬉しいですね。

自然と食材の宝庫である糸島。高速バスを使えば、片道30分で福岡中心部に行けてしまう便利さにも驚いたそう。
特に、池田さん一家の暮らす南風台の魅力について尋ねると…。

南風台は、とても住みやすいです。山を切り開いた所なので風がぬけて心地良いですし、他のエリアから越してきた世帯が多いようで、溶け込みやすかったです。前原インターや、高速バス乗り場が近いのも便利ですね。

インスピレーションで選んだ南風台小学校は、オープンで風通しの良い感じが気に入っています。区長さんが新入生を送り迎えしてくれたり、地域のボランティアが盛んなのも良いですね。ボランティアサークル(パソコン・読み聞かせ)や、お父さんたちのおやじの会など、親のボランティア活動も熱心ですよ。子どもたちへの関心の高さが、授業参観の出席率にも表れるらしく、その出席率の高さに他のエリアから転勤されてきた先生がびっくりされていました(笑)。運動会も地域の運動会と合同ですし、地域・学校・子どものつながりが強いのも安心です。

たくさんの魅力が語れる一方、小さな子どもを育てる親ならではの困ったこともあるそう。

糸島には、整備された公園やグラウンドが少ないんです。自然環境はたくさんあるのですが、小さい子どもを安心して遊ばせられる所は意外とないですね。住宅街に小さな公園があってもボール遊びが禁止されていたり、放課後の校庭は部活動で使われていたり。子どもをゆっくり遊ばせたいと思い、公園へ行く時は今津公園へ。プールに行く時は、公共のプールが糸島にはないので、西区の市営プールまで行くこともあります。これから移住されて来る方が多いことも考えると、あったほうが良いだろうなとは思いますね。

それでも子どもの教育環境として、糸島は大正解だったと話す。教育面以外のことについても尋ねてみた。
移住後、ご主人は、当時勤めていた税理士事務所を退職し、個人事務所を設立。現在は、ご自宅をオフィスとして、仕事の合間にはサッカークラブのコーチを務めたり、異業種交流会を開催したりしているそう。

低学年の子どもたちを指導する池田さん。練習が終わる頃には、山間に夕日が落ちていく

人脈がない土地での立ち上げは正直きつかったですが、ご縁に助けられ、仕事も軌道にのってきました。時間や場所にとらわれない分、仕事の合間にいろんな活動をしたりと、自由に時間を使えるようになりました。

糸島に越してきて、サッカーのジュニアクラブチームもつくったんですよ。野球が盛んな糸島でサッカーも負けずに盛り上げていこうと、社会人チームを運営する知人を誘い、一緒に立ち上げたんです。スタートは小さなチームでしたが、今は兄弟で参加してくれる子がいたり、友達が友達を呼んだりして、いろんな学校のいろんな学年が集まるチームになりました。木曜と土曜の夕方に師吉グラウンドで練習しています。

異業種交流会も、糸島に来てから始めたことですね。今でこそ、糸島は大小いろんな集まりが盛んですが、3年くらい前までは交流会は多くなかったんです。糸島のランチ会は、まずお互いの信頼関係をつくることが目的です。友達作りや、普段からのお付き合いを大切にしようという気持ちで参加して、そこから気の合った者同士が、他のイベントを立ち上げたり、ビジネスにつなげていくこともあるようです。

ランチ会での出会いが、他のイベントやビジネスに。自然に派生していく感じが糸島らしい

最後に、糸島への移住を検討する方にアドバイスを!

学校も土地も相性なので、来て、見て、自分たちで感じるのが一番だと思います。お試しという意味で賃貸もおすすめ。合うか合わないかは、実際住んでみるのが一番よくわかりますから。糸島には古い慣習や風習が残るエリアもありますが、そういったものに馴染めるかどうかも相性かもしれませんね。

新しい出会いにも恵まれ、糸島での生活をとても気に入っていると話す池田さん夫妻。移住当初に抱えていた知らない土地に対する小さな不安もすっかり払拭され、今は、糸島の中で定住できる、より良い所を探している最中だそう。
未知の土地だからこそ、新しい出会いや新たな楽しみが見いだせる。池田さんの暮らし方には、生活をより楽しむヒントがいっぱいだ。

お気に入りの野北海岸。釣りをしたり、貝を掘ったりして週末を過ごすことも

プロフィール(2014年1月現在)

●池田さん夫妻

●糸島移住歴 6年

●仕事 ご主人/税理士

●移住元 春日市