友人との出会いから糸島へ。家族も仕事も、地域のことも、メリハリのある理想の暮らしが近づいた。

長女妊娠をきっかけに、より良い子育て環境を求めて糸島へ。「駅近」で探していたら、駅も海も歩いて行ける古民家が見つかった。この立地、糸島でもごく限られたエリア。住まいといい、タイミングといい、とても幸運だったと言えそう。移住11年のクレマデス海上さんに、当時を振り返ってもらった。

もともと私は田舎出身だし、主人もスペインの海の近くで生まれ育ったので、海辺に住めたらいいねと、話していたんです。その頃、友達になったのが糸島の人で、その人の元へ通ううちに、糸島が次第に身近になっていきました。
当時、私の勤め先が福岡市の天神にあり、移住後も働き続けるつもりだったので、住まいについても駅の近くがいい、というくらいで、それほどこだわりはありませんでした。そうしたら、駅も海も両方が叶う物件が見つかったんです。築150年の古民家で、価格も予算内。海まで徒歩5分!遊びに来てください(笑)
でも決める前には心配事もあって、即決というわけではなかったんですよ。

 
移住して11年。「海近」の環境は家族に心地よい時間をもたらしているようだ

「トイレお借りできませんか?」で始まった、古い物件につきものの心配事チェック

主人は下水道のないところに住んだことがないんです。物件のある地域は下水道が通っておらず、トイレは簡易水洗だったのですが、そういったトイレの経験が主人にない。そこで、その当時知り合った、近所のお店をやっていらっしゃる方に、「トイレを使わせてもらえませんか」と正直に話して、主人に体験(笑)させました。結果、それほど違和感はなかったようで大丈夫でした(笑)
近所づきあいや住みやすさなど、気になることが後から後から出てきて、時間の融通が利く仕事をしていた主人に「もう一回行って近所の人に聞いてきて」って無茶なお願いをしたり。当時はまだ外国の方が少なかったし、主人が「この辺住んでてどうですか」なんて尋ねて回る様子は、相当目立っていたと思います。
主人は一人でもコミュニケーションがとれるので、そのおかげもあって移住に際しての大きな問題はなかったですね。

毎年、庭の梅の実の収穫も恒例行事

子どもの小学校入学を機に芽生えた地元意識。移住11年となった今は、自宅をベースに仕事も地域のことも余裕を持って取り組めるようになった。

福岡市の勤め先には電車通勤していましたが、2年前に退職しました。糸島に来て生まれた長女が小学校に上がり、自宅で仕事ができるようになったことで、自分で時間をやりくりして、学校や地域の役も受けられるようになりました。
勤めていた頃は、家にいることがほとんどなく、週末は家族でどこかに出かけることが多かったので、地元の方とふれあうことはあまりありませんでした。それが今は、地域と一緒に暮らすことの大切さをじわじわと感じています。同じ仕事仲間で子育て中のお母さん方とも話す中で、ここで暮らすことの自覚が出てきました。地域のことに、もう少し深く関わっていけたらいいなと思っています。

夏の「深江川祭り」。子どもたちが水難に合わないよう、川の神に祈願する。こうした行事も地域とのつながりを育む

楽しい時間ですか? 家族で海にいくときかなぁ。私は子どもたちと海を眺めてぼーっと過ごす。いちばんリラックスできる時間です。主人は海でウクレレを弾くのがストレス発散になっているみたい。一緒に行くけど、みんなばらばらに過ごしている、それも楽しい。人が少ないので「密」の心配もありません。

徒歩5分の海で家族が思い思いに過ごす時間がいちばんの楽しみ
 

糸島暮らしがすっかり板についたクレマデスさんに、これから移住を考える人へのアドバイスを聞いてみると、意外にも「糸島への期待はそれほどなかった」という。

実は、「駅近」「海近」で予算に合う住まいがあれば、他にこだわりはなかったんです。期待し過ぎず、決める前に、できればそこに住んでいる、いろいろな人と話ができたらいいと思います。不安なこともきっと多いと思いますが、前向きにとらえて、マイナス面も含めて楽しめたらいいですね。

自宅は住みながら手を入れてきた。これまでに水回りを刷新し、オール電化へ。昨年は屋根を葺き替えた。真剣に仕事に向き合い、家族との時間はのんびり過ごす。そんなメリハリのある暮らしがしたいと、にっこり。

プロフィール(2021年4月現在)

●クレマデス海上 愛さん 40代

●糸島移住歴 11年

●仕事 移住・旅行サポート、執筆など 

●以前の住まい 福岡市