季節との関わりの中で暮らしを見つめる、東京にはなかった時間がある

地域を多面的に捉えたいと、繰り返し移住相談会に参加

二人とも住むなら“山派”。「でも糸島は海も近い。鹿家の海のきれいなことに驚きました」と千恵子さん
 
東京在住の深田龍さんと千恵子さんは、地方移住を決めてから様々な移住相談会を利用してきました。東京での福岡県移住相談会を手始めに、糸島市の移住相談会、さらに糸島に移住した後も転居相談会(※)を経て、新築へ。龍さんは「(市の)想定されたスキームの通りになぞっていますね」と笑いますが、二人がそうしたのには理由がありました。
千恵子さんは「(東京にいる)私たちにとって多面的、包括的に地域の話が聞ける機会は少ないんです。移住相談会は地元の方と話をする貴重な機会と捉えて積極的に参加しました」
当初、検討先は福岡県だけで4、5カ所あり、最終的に糸島に絞ってからも、「東京から移動するからには東京と同じような暮らしは望んでいない。そこでないとできない暮らしがしたかった」と二人は口をそろえます。二人が思い描いていたのは、子どものころ野山を駆け回って遊んだ情景でした。いったん糸島市街地の賃貸住宅に住みながら、南部の山に近いエリアでこまめに物件検索を続けました。
(※)糸島市中心部や福岡市早良区、西区などに居住する人を対象に、海や山に近いエリアへの転居を提案する相談会

 

子どもが大きくなるまでは子どもたちとの生活を思い切り楽しみたい、と龍さん
 
ある日、千恵子さんはグーグルマップのストリートビューで「分譲中」の看板が立つ土地を発見。即決に近い形で購入・新築に至ります。2年間、多くの地域や物件を見てきたからこそできた決断。しかも、そこは家族で何度か訪れ、とても気に入っていた場所でした。転居相談会で地元の地域コーディネーターから小学校の状況などを詳しく聞けたことも、大きな安心につながりました。

広がる田園風景が仕事に集中した頭を休めてくれる

二人ともグラフィックデザイナーで、子どもたちを送り出した後はそれぞれパソコンに向かう毎日です。「基本、室内にいるので、朝夕の犬の散歩で田園風景を見て、気持ちが晴れますね」と龍さん。千恵子さんは「麦の匂いがしてきて、ああもうそんな季節なんだな、夕方の気温が下がってきたから子どもと川遊びに行くのはそろそろ終わりかな」と、季節に合わせて物事をとらえるようになったそうです。「季節感や天候の移り変わりがわかりやすい」と言う龍さん。「向こうから雨が迫ってくるのがわかるんです。カーテンみたいに(笑)」

 

「この風景が仕事のデジタルチックなものを消してくれる」と千恵子さん

「東京に住んでいたころ、田舎で暮らすならこんなふうに暮らせたらいいよね、と話していたことが、ここに住んでより近づいた」という二人。「糸島に来ていちばん喜んでいるのは、実は子どもたちです」と、表情が和らぎます。 令和7年度から地域コーディネーターとして移住のお世話をしている龍さんは、移住を検討している人へ「あせらないこと。自分の目で見ること。人の“良い”と自分の“良い”は違う」とアドバイス。千恵子さんからは、「その場所や物件が持つ空気感、わくわくするかしないかを大事にしてほしい」と、実感のこもる言葉をいただきました。


深田さんは、地元の棚田を守る「井原山田縁プロジェクト」に参加、米作りにも挑戦している
 

プロフィール(2025年9月現在)

●深田 龍さん 40代  千恵子さん 40代 

●糸島移住歴 4年

●仕事 グラフィックデザイナー(自営) 

●以前の住まい 東京都