3年間通い詰めた糸島で、家族とともに開く仕事と暮らし

糸島の人の面白さ、刺激を感じて移住を決めた

 

井手英史さんと絢子さん。移住2年後に購入した中古住宅を住まい兼店舗に改修した
井手英史さんと絢子さんは、ワーキングホリデーで滞在中のニュージーランドで出会いました。一足先に絢子さんが帰国、遅れて帰国した英史さんはそのまま糸島市へ。事前にウェブで調べておいた借家で合流し、新婚生活が始まりました。2015年1月のことです。 英史さんは隣の佐賀県出身で、糸島には毎週のように遊びに来ていたそうです。自分らしい生き方を追いながら3年間通ううちに、親しい仲間もできていました。 「いつも一からやり直せる自分でいたいという気持ちがあって、糸島ではない他のところも全然ありなんですが、糸島以上に魅力的なところがないんですよね。こんな面白いところはない。人が面白い、吸収できることが多く刺激的です」  英史さんのこんな糸島礼賛をニュージ-ランドで聞いていた絢子さんは、「フットワークは軽いほうなので、一回住んでみようかな、くらいの気持ちで(笑)。私は大阪出身ですが、今は糸島がすっかりホームになって知り合いも増え、すごく居心地がいいですね」とにっこり。 実は、英史さんがニュージーランド行きを決めたのも、糸島の海外経験者や海外からの移住者に触発されたからでした。そこで伴侶となる絢子さんとの出会いがあったのですから、糸島との縁は深いものがありそうです。

築47年の住宅を住まいと店舗に改修、さらにもう一つの計画も実現へ

糸島での二人の夢は、革細工の店を出すこととゲストハウスの運営。その資金を貯めるため、二人はいったん勤めに出ます。1年後、英史さんは郊外にスペースを借りて、革細工とニュージーランド雑貨のお店をオープン。さらにその1年後には郊外に中古住宅を購入、半年かけて住まいと店舗に改修し、移転しました。
 

奥の店舗に通じる小径は、居室の一部を屋根だけ残して解体したもの

改修工事は友人たちの手を借りてDIY。英史さんの内装業の経験が生きました。「築47年の中古住宅で、古いからこそ好きにやれる。やりたい放題という感じでした」と英史さんが言うと、絢子さんも「私も壁を壊しました」と笑います。車庫を改造して店舗へ。駐車スペースからお店に至る通路部分はもともと室内だったところで、屋根だけを残して解体しました。

 

改装中の店舗部分。知り合いの建具屋さん、電気屋さん、またバイク仲間の手を借りながらDIYで
 
一家が住む地域は移住者を受け入れるのが20年ぶりとあって、お年寄りが多い中、小さな子どものいる家族の存在はそれだけで明るい話題に。越してきてすぐ、絢子さんは「お店をやるからには、たぶんどこかで迷惑をかけるから」と、一軒一軒、挨拶して回りました。英史さんは地域の役員の任期中にグループラインをつくって地域の連絡体制を迅速化するなど、活性化に一役買っています。「落ち着いていて、伸びしろのあるエリアだと思います。お店を目指してやってきていただくお客様をゆっくりお迎えできます」
 

鳴き砂で知られる「姉子(あねご)の浜」で
 糸島で困ったことは?と尋ねると、英史さんは「物件が出てこない(笑)」と即答。物件探しに苦労した様子がうかがえます。住まいの他に店舗、民泊をすべて叶えられる物件は非常に限られ、「予算的にも一度にすべてをやるのは無理」と計画を修正。「民泊はいつかきっと」との思いを持ち続けました。 移住して10年、その夢がついに実現します。自宅から約800mの山あいに手ごろな広さのログハウスを見つけ、民泊用に購入。オープンが目前です。
 

プロフィール(2025年9月現在)  

●井手英史さん 40代  絢子さん 30代

●糸島移住歴 10年

●仕事 革細工・雑貨店、民泊経営

●以前の住まい 夫:佐賀県、妻:大阪府