糸島のテレワーカーが語る「自分で選ぶ仕事と暮らし」

コロナ禍以降、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方ができるテレワークはより身近なものとなりました。一言でテレワークと言っても、勤務体制や仕事内容、時間の使い方は人それぞれ異なります。糸島市へ移住やUターンをし、実際にテレワークで働いている3人がテレワークでの働き方や集中するためのコツ、糸島市で暮らす魅力などについて語り合いました。
 

参加者のプロフィール

松本智子さん
山梨県出身。システムエンジニアとして東京のベンチャー企業にフルリモートで勤務し、ソフトウェア開発およびコンサルティング業務を行っている。1児の母。テレワーク歴は5年。

西綾子さん
岡山県出身。医療系スタートアップ企業にて創業当初よりフルリモート勤務のフレックスタイム制でセールス業務に携わっている。小学生の長男を筆頭に3人の子どもたちは空手に夢中。テレワーク歴は2年。

澤野香織さん
佐賀県出身、小学生の時に糸島へ。結婚後は夫の転勤で各地を転々とし、2019年に糸島へUターン。業務委託で建築積算用3Dモデル作成や取材ライティング、事務を請け負っており、テレワーク歴は4年。ハーブのインストラクター資格を持ち、高校生の娘がいる。


今回お話を伺った皆さん。左から澤野さん、西さん、松本さん
 

ワクワクを最優先にたどり着いたテレワーク

—今の仕事を始めるようになったきっかけを教えてください。

松本さん:私は新卒で就職してからずっと東京で働いていましたが、5年前に夫の仕事で糸島に転居することになり転職活動をしました。自分の興味があることや面白そうと思えること、糸島でできる仕事を条件に探していたら、東京のベンチャー企業から声をかけてもらって。最初は業務委託での契約を提示されましたが、交渉してフルリモートの正社員で働いています。

西さん:以前は4つ星ホテルでの営業や社会福祉法人で働いていましたが、コロナ禍に福岡市内から糸島に引っ越してきました。仕事を探している時に、今の会社の代表と出会って「新しい事業を立ち上げるので話を聞いてみませんか」と声をかけてもらいました。その話を聞いた時に、すごくワクワクして。今までテレワークをしたことはありませんでしたが、せっかく一から仕事を始めるし、新しいことにチャレンジしようと思って決めました。

澤野さん:2019年に糸島にUターンをした後、糸島市主催のライター講座を受講して、ライターの仕事をしたり、住宅関係や事務などの仕事をしたり、いくつか掛け持ちで仕事をしていました。糸島市テレワークセンターの相談員をしていた時に、松本さんから「自分の勤めている会社で3Dモデル作成のオペレーターを募集している」と聞いて、未経験でしたが挑戦しました。20代の頃から自由な働き方ができるテレワークに憧れていたので、願いが叶いました。


テレワークは長年の夢だったと話す澤野さん

—皆さん、最初からテレワークではなかったんですね。テレワークを始めるにあたり勉強したことはありますか。

西さん:テレワークだからというわけではないですが、セールストークなどについて書かれた本を読みました。慣れるまでは代表に常に確認してもらいながら、仕事を進めていました。

松本さん:前職とは全く仕事内容が違うので、会社で実施される研修に加えて、分からないことはGoogleで調べて独学で学びました。この業界はどんどん情報が新しくなっていくので、ChatGPTも活用して常に勉強し続けています。

澤野さん:3Dモデルの作成は会社専用のソフトを使っています。最初に松本さんから研修を受け、テキストを見ながら自分でも勉強しました。デジタルツールについてはGoogleやYouTubeを使って勉強し、今でも日々学んでいます。


それぞれの働き方について興味深く耳を傾けます

 —テレワークをしていて難しいと感じることはありますか。

松本さん:メールなど文字でのやり取りが増えるので、感情が伝わりにくく、コミュニケーションの取り方が難しいと思います。私も送られてきたメールが深刻な内容に感じることがありますが、相手の意図が分かりにくい時は、すぐに電話します。実際話してみると、そこまで深刻じゃないことも多いです。

澤野さん:メールだと仕事のやり取りにタイムラグがありますね。あと、私は時間管理が難しく、無理して仕事をしていた時期がありました。長時間仕事をすると疲れて結局ミスをすることに気付いたので、今は1日6時間くらいにセーブしています。

西さん:私も時間ですね。やろうと思ったらずっと仕事をし続けられるので、最初は仕事や家事に無理のない時間配分が分からなくて、体調を崩したことがあります。そこから勤務時間を調整し、家事も頑張りすぎないようにしています。

—松本さんと西さんは雇用型テレワークで、澤野さんは自営型テレワークですね。休みの取り方や働き方など、どんなところが違うと感じますか。

西さん:私が勤める会社は有給休暇の他にも色々な休暇制度があり、休みが充実しています。フルフレックス制なので、月に決められた労働時間を満たせば勤務時間は自由です。子どもの参観日に1時間仕事を抜けたら、その分1時間長く働けば、休暇を取らなくてもいいです。働き方が自由な会社なので、1ヶ月くらい海外で仕事をしていたメンバーもいます。

松本さん:私も会社員なので有給休暇があります。有給を申請した日は、仕事の連絡が来ないのでしっかり休むことができます。

澤野さん:私は自営型なので有給休暇はありませんが、その分時間は自由に使えます。社会保険や雇用保険がなく、確定申告も自分で行わないといけないので、雇用型に比べて自己管理の部分が増えると思います。

松本さん:私はお金の計算が苦手で、「控除」とか言われると思考が停止してしまうので社会保険などの手続きは会社に任せたいです。

西さん:プログラミングのコードは読めるのに意外ですね!


税金や保険料の計算は会社に任せて、その分仕事のことを考えていたいと話す松本さん
 

仕事と暮らしのバランスを自分で調整できるテレワーク

—テレワークをしながらどんな1日の過ごし方をしていますか。

澤野さん:3Dモデル作成以外にも仕事をしているので、他の仕事から連絡が来ていないか最初にメールをチェックします。10時から3Dモデル作成の仕事を始めて、昼休憩をとって、17時頃に終わります。20時ごろから2時間くらい仕事をすることもあります。

松本さん:私は朝子どもを見送ったら、まずはのんびりして9時ごろから仕事を始めます。運動不足が気になるので、最近は昼休みの時間にYouTubeを見ながら運動したり、筋トレをしたり。夕方に子どものお迎えに行って、少し仕事をして、あとは夕食や家事をします。仕事前の時間、昼休み、寝る前の時間が私の自由時間です。

西さん:朝子どもたちを送り出したら、片付けや洗濯をして、9時半くらいから仕事を始めます。17時まで仕事をしたら子どもたちの空手の送迎をして、帰宅は21時頃ですね。そこから夕飯、お風呂を準備して、道着を洗わないといけないので、朝だけでなく夜も洗濯します。仕事が終わったらすぐ送迎なので、子どもたちの間食用のおにぎりは、仕事前の朝の時間や、昼休みに作っています。

—時間の使い方を工夫されているんですね。仕事に集中するために工夫していることはありますか。

松本さん:仕事に余裕がある時は、スローペースになりがちなので、サボらないようにカフェやテレワークセンターに行って集中するようにしています。

澤野さん:私は時間を区切って仕事をしています。ここまでやったら自分にご褒美をあげると決めて、コーヒーやおいしいお菓子を用意します。気分によっては音楽を聴きながら仕事をすることもあります。

西さん:私は家でカーテンを閉めて集中モードで仕事をしています。気付かないうちにご近所の方が玄関に野菜を置いてくれていることも。

—糸島で暮らしていて良かったと思うことはありますか。

松本さん:私は食事です。普通にスーパーで売っている野菜や肉、魚がおいしい。糸島の食材は焼くだけでもおいしいから助かりますね。土日は鯛のお刺身を買って、ランチに鯛茶漬けを作ることもあります。暮らしにちょっとおいしいが加わって、地味だけど満足しています。

澤野さん:私は糸島が地元なので、近くに両親、妹がいることは心強いですね。今まで転勤族だったので、身近に相談できる相手がいるというのは安心感があります。

西さん:私は畑です。以前はマンション住まいだったのでできなかったのですが、今は庭の畑で野菜を作っています。仕事で疲れた時はちょっと畑を見に行って、気分転換をしたり、ついでに草を抜いたりしています。

—お子さんの習い事で忙しい中、畑まで作ってすごいですね!

西さん:休日に子どもと一緒に畑仕事をしたり、保育園のバスを待っている間にちょっと草を抜いたりして時間はかけません。こまめに収穫するものや、手がかかる野菜は作らないようにして、玉ねぎみたいなたくさんあっても困らない作物ばかり育てています。

—畑作りも工夫しているんですね!


野菜作りは糸島に移住してやってみたいことの一つだったと話す西さん
 

今後の働き方は自分の気持ちに正直に向き合う

—最後に今後の働き方について聞かせてください。今後もテレワークを続けたいですか。

松本:テレワークにこだわって、自分のやりたいことの選択肢が狭くなるなら、こだわらないですね。でも今はテレワークだから東京の企業で働くことができるし、仕事の幅が広がっていると感じています。楽しくやっているので、今は次のことは考えていないかな。

西さん:今は子ども中心の生活で、習い事の送迎が大変。通勤のある仕事だと、通勤時間がもったいないので、今は無駄なく働けるテレワークがいいですね。子どもが手を離れたらもっとワクワクするものを見つけたい。それがテレワークかどうかは分からないですが、仕事はずっとしていたいです。知らないことを知るのは楽しいし、ワクワクすることなら何でも挑戦したいと思っています。

澤野さん:結婚前は設計図面を描く仕事をしていたので、3Dモデルの仕事は昔のことを思い出して楽しいです。一番大切にしたいのは、自分の好きなことをする時間や家族との時間です。テレワークは時間や仕事量を調整できます。今は人生を楽しみたい気持ちが大きいので、私には自営型テレワークが合っていますね。